細雪 市川崑


市川崑監督の『 細雪 』
こちらも大好きな日本映画。
映画を見る前に谷崎潤一郎の『細雪』を読んでいたのですが、原作の4姉妹のイメージにピッタリの女優さんたちでした。

長女・鶴子に岸恵子さん、次女・幸子に佐久間良子さん、三女・雪子に吉永小百合さん、そして四女・妙子に古手川祐子さん。
真っ赤な口紅をつけた四人は、とても美しくて可愛らしいです。

大阪・船場の旧家、蒔岡家。
四姉妹の父の代は、羽振りよく商売をしていましたが、今ではお店も人出に渡っています。
長女、次女、三女は豊かな暮らしの中で育ったので、蒔岡家としてのプライドが高く今でもどこか浮世離れしています。
その点、四女の妙子は、自立を考えていて人形作家としてお弟子さんをとったり、裁縫を勉強したり、駆け落ちをしたり、とても現代的。

本来なら本家に住まなければいけない雪子と妙子ですが、長女・鶴子のお金に厳しい婿養子、伊丹十三さん演じる辰雄との折り合いが悪く、二女・幸子の婿養子、石坂浩二さん演じる貞之助が面倒見がよく、とても和やかな人柄で居心地が良いため、二人とも分家に住むことを好んでいます。

物語は、三女・雪子のお見合いを軸に進んでいきますが、雪子のお見合いに関する長女と次女の会話、雪子の結婚がなかなか決まらず、結婚ができない四女の妙子と雪子の気持ち、四姉妹ならでは関係性が見ていてとても興味深い。

この三女の雪子、とても美しくて口数が少なく一見おとなしそうな女性なのですが、実は四姉妹の中で一番性格がきつくて、頑固者かもしれません。
優しい吉永小百合さんしか見たことがなかったので、たまに見せる意地悪そうな顔が妙にセクシーで好きでした。
雪子自身も自分が美しいことを承知していて、長女の旦那さんも次女の旦那さんも美しい雪子にとても優しく接しています。それを見ている長女と次女の表情も面白かったです。

市川崑監督の映像美と合わさって『吉原炎上』とは真逆の日本の美を見ることができます。
しかしセリフの端々に見られるように、ジワジワと戦争がせまってきているようで、この美しい優美な生活を送っている四姉妹もやがて、あの戦争に巻き込まれるのかな……と少しせつなくもありました。

このような美しい物語を書いた谷崎潤一郎さんは、とてもゆったりした所で執筆していたと思っていたのですが、実際は戦争中に書いていたそうで、現実と空想の世界のギャップに驚かされました。
戦争で失われる美しい日本の生活の記録を残しておきたかったのかもしれません。
細雪の四姉妹は、谷崎潤一郎さんの奥さん、松子さんの四姉妹がモデルだそう。
倚松庵に行ってみたいです。

細雪


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