サラバ ! 上・下巻 西加奈子


西加奈子さんの『 サラバ ! 』を読みました。

知人がリクエストして誕生日にこの本をプレゼントとしてもらったそう。
読む時間がないということで私に先に貸してくれたのが、ハードカバー上下の単行本。
私は、夜寝る前に本を読むので、文庫本派です。
ハードカバー=重いというのと、プレゼントとしてもらったものを私が先に読むので「丁寧にページをめくらなきゃ….」というプレッシャーで、しばらくベットの横に置いていたのですが、長く借りているのも悪いので、読み始めました。
最初はなかなか読み進められなかったのですが、上巻の途中辺りから下巻の終わりまでは、物語の展開が面白くて、のめり込んで一気に読むことができました。

語り部は、圷歩(あくつ あゆむ ) 。
彼がイランで生まれて、日本の大阪に戻って、その後エジプト、大阪での高校生活までが上巻、東京の大学へ進学して現在までが下巻に描かれています。

主人公の歩と彼の家族や周囲の人々や友達の話が細かく描かれていて、全ての登場人物の人となりが分かります。
母の愛情が足りず、いつも怒りや不満を宿している姉。あまりに個性的で周りから浮いています。
母親というより女として生きている勝ち気な母親。
その母親と娘の不仲に振り回される優しい父親。

内容としては、歩の子供のときからの生い立ちをひたすら歩目線で書いてあるのですが、胸がキュンとしたり、ジーンとしたり、涙が自然と出るのは、何か懐かしい気持ちになるからだと気づきました。
私が忘れているだけで、主人公の歩と同じ年齢のときに同じ感情を抱いたり体験をしたのかもしれません。
主人公が海外での生活をしていることで、差別に対する考え方や宗教に関する捉え方、どれも芯をついていて心にズシっときました。

最初に出てきた話が後から出てくる話と上手く繋がっているのに、そこの至るまでの自然な流れの文体や「まさかここで笑わされるとは!!」と驚く、知らず知らずのフリとオチに作家の笑いのセンスを感じました。
読み進めていくうちに「宗教(信じること)がテーマなのかな?」と思っていたのですが、自分が相手の印象で思っていることと真実は違うということ。相手の話をきちんと聞いてみないと真実は分からないというエピソードがいくつか書いていたので、こちらもテーマだったのかも。

最後は愛にあふれていて、涙、涙。
上巻の最後から下巻にかけては先が気になって途中で止めることができず、またまた徹夜になってしまいました。
読み終わってすぐ貸してくれた知人に「すっごい良かったよ !!」と伝え、もう1人の読書好きの友人にも「 西加奈子さんの『 サラバ 』が人間の真髄をついていて、とっても深くて考えさせられた。」と話したら、彼女も西加奈子さんの作品が好きだそう。
以前から西加奈子さんの本を読んでいたそうで(『 サラバ 』はまだ読んでいないそうですが )
「『 さくら 』も感動するよ。」と教えてくれたので、近々文庫本で読もうと思います。
『 サラバ 』も文庫本になったら、また読もう…..。

初めてのトランジットで、トランジットの意味が分からず、出国のイミグレーションの列に並んだら、周りがアラブ人だらけでちょっと怖かったこと、スペインのセビリアの駅に到着したときにホテル勧誘の人たちが私の分からないスペイン語で大声でまくしたてながら着いてきて怖かったことを『 サラバ 』のエジプト到着シーンで思い出しました。
きっと、この本を読むと自分の忘れていた過去をスッと思い出すと思います。


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