007『 スペクター』を観て、ダニエル・クレイグ版 007は、ずっとベースに『 カジノ・ロワイヤル 』の ボンドとヴェスパーの物語があるな………と思ったので『 カジノ・ロワイヤル 』をもう一度きちんと観てみました— 前回は絵を描きながらの流し見だったので…。
内容は、英国諜報部MI6の00の地位に昇格したばかりのダニエル・クレイグ演じるジェームス・ボンドの活躍を描くもの。
物語は、ル シッフルという男が、テロリストの資金を増やす取引をするところから始まります。
旅客機製造会社の株のカラ売りを仕込んだ上で、その会社が製造した新旅客機を爆破させ、巨額の利益を得ようというもの。
武器の売人ディミトリオスの妻ソランジュと接触し、ディミトリオスがマイアミへ行くこと知り、マイアミ国際空港で披露される新旅客機の爆破計画をMから入手したボンドは、ぎりぎりの所で爆破を阻止。
これにより、ル シッフルは、テロ組織の資金を無くし、命を狙われる窮地に陥ります。
テロ組織に返却する資金を取り戻そうと、数学に強い ル シッフルが、モンテネグロのカジノ・ロワイヤルで開催されるポーカーゲームに参加することに。
そして、その計画を阻止する為にボンドが、ゲームに参加します。
ボンドのカジノの資金は国庫から出るため、その資金の監視役として登場するのが、財務省のヴェスパー・リンドです。
ボンドとヴェウパーは、最初お互い懐疑的でしたが、一緒に過ごすうち惹かれていきます。
ボンドは「この仕事は、魂が腐っていく。」とヴェスパーのためにMI6を辞め一緒になろうとするほど。
ヴェスパーもボンドの誠実さに惹かれ愛し始めます。
以下 ネタバレです。
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カジノに勝利し、テロリストの資金を手にしたボンドは、ヴェスパーの口座へ送金をします。
銀行へ出かけたヴィスパーの留守中、Mから「送金はまだか?」と催促の電話が入ります。
急いでヴェスパーを見つけ追いかけるのですが、そこで目にしたのは、ヴェスパーが、ル シッフルへ資金を手渡す光景でした。
ヴェスパーには組織に人質としてとらえられた恋人がいました。
その恋人を救うため、ボンドから銀行のパスワードを入手し、資金を組織に渡したのですが、いつしかヴィスパーも本気でボンドを愛していました。
恋人を救うため、愛するボンドを裏切った自分が許せなかったヴェスパーは、海へ沈んでいく鉄柵のエレベーターに自ら鍵をかけ ” I’m sorry. James “と残して死を選びます。
初めて本気で愛した女性に裏切られたボンドの傷心が、心を氷のように固くし、新米007のボンドを強いものにしますが、ボンドの心の中にはずっとヴェスパーがいるよう。
それを暗示させるように、その後の『 慰めの報酬 』『 スカイフォール 』、今回の『 スペクター 』とヴェスパーを彷彿とさせるシーンがあります。
『 慰めの報酬 』では、幼い頃に大火を経験したことのあるカミーユが火に囲まれ震えているところをボンドが抱きしめますが、これは初めての死の恐怖にショックを受け震えるヴェスパーをボンドが抱きしめたシーン。
『 スカイフォール 』では、水の中へ沈んでいったヴィスパーと冒頭のボンドが水へ沈むシーン。
そして、最新の『スペクター』では、長距離列車でボンドとマドレーヌ・スワンが食堂車のテーブルで向き合い語るシーン、これはボンドとヴェスパーが初めて出会ったシーンと重なります。
ボンドのヴィスパーへの気持ちや00の仕事への疑問がクレイグ版ボンドにはベースにあるので、全体的に悲壮感を帯びていて、女性には響くような気がします。
私は、映像は『 スカイフォール 』が一番美しくて好きですが、物語は『 カジノ・ロワイヤル 』が一番好き。
『カジノ・ロワイヤル』と『慰めの報酬』は続きもので、007に成り立てのボンド、『スカイフォール』と『スペクター』は続きもので、ベテラン007のボンドです。
レア・セドゥはフランス語訛りのある英語ですが、ヴェスパー演じるエヴァ・グリーンはフランス人でも英語がとても綺麗なので何故だろう?と思ったら、幼少期にイギリスやアイルランドに住んでいたよう。フランスでは国内のアメリカンスクールに通っていたそうです。
もう一度、クレイグ版007を観なおしたら『 スペクター 』が深いものになると思います。
カジノ ロワイヤル